漢字の扱い「御」⑵

「御」という字 ◇「アキツノ」とは。 その昔、アキツノという言葉が有りました。この語音で表わす言葉には、幾つかの全く意味の異なる形があります。 ・「アキ・ツノ」は狩場。アキは食料・食材を意味し、それを獲る土地(野)なので、アキ・ツノです。助詞のツ…

漢字の扱い「御」⑴

「御」という字 ◇「御」という字 現代の日本語で御の文字は、お、おん、ゴ、の音で使われます。御名前〔おなまえ〕、御召し物〔おめしもの〕、御社〔おやしろ〕。会社の場合は御社〔おんシャ〕。また御案内〔ゴアンナイ〕、御馳走〔ゴチソウ〕、御足労〔ゴソ…

「古事記に於ける漢字の扱い」

◇「漢字の使い方」 漢字とは基本的に表意文字ですが、日本人は昔から表音文字としても使ってきました。恐らく、漢字に接し始めた初期の頃から、借音記号として使ってたのではないか。 普段使っている言葉を文字化したいと思った時、声をそのまま表せる假名書…

「十七世」

◇「十七世神」 *《古事記》上巻、大国主の条。 「自八嶋士奴美神以下、遠津山岬帶神以前、稱十七世神。」 ○八嶋士奴美神より以って下〔しも〕、遠津山岬帶神までを、十七世の神と稱〔ィ〕う。 *「十七世」とは、須佐之男命の子孫をいいます。須佐之男命は天…

「記紀」の書き出し

◇「書き始め文」 *《古事記》の「序」では、この世の始まりを次のような二行・十六文字(プラス棚字)で表し、これを冒頭句として据えます。(※【解説・3】冒頭句。2021-6-11、参照) 夫 混元既凝 氣象未效 無名無為 誰知其形 然 乾坤初分 參神作造化之首 …

「序」の構成

【 解説・26 】「二段説と三段説」 ◇「構成」二段・各五節 《古事記》の序は、二段(前段・後段)から成っており、それぞれ五つの文群に分けられた画面構成に仕立てられています。おそらく二気五行の考え方に則ったものでしょう。序を見ると、《記》とは国史…

「安萬侶」

【 解説・25 】[太朝臣安萬侶] ◇「オオ(オホ)」の名についての記録《神武記》伊波禮毘古(神武)の皇子・神八井耳命の子孫に意富臣の名が見える。《綏靖紀》即位前に「神八井耳命…是即多臣之始祖也」とある。《景行紀》十二年九月、多臣之祖之武諸木。《…

「書目」

【 解説・24 】 ◇「書目と署名」書目は記本文(上巻)に添えられているものです。目次として上巻、中巻、下巻に記載される御世の範囲を示します。 ○凡そ書き録〔シル〕すところは、天地開闢から初めて小治田の御世で訖〔オ〕わる。○ここに、天御中主神より以下…

付記・2

【 解説・23 】《後段・五/ⅱ》(6〜10/10) ○即ち、言葉の意味がよく分からない語は、注釈を入れて説明をしておく。語意が容易に理解できるものは、殊更に取り立てて説明はしない。 また、姓〔カバネ〕などにある「日下」をクサカといい、名前に使われる「…

付記・1

【 解説・22 】《後段・五/ⅰ》(1~5/10) ○漢字を表意文字として使った場合、意味は伝わっても言葉として心に届きにくい。といって日本語の音を優先し、文字を全て仮名書きにしたのでは、徒〔イタズ〕らに文章が長くなるばかりである。 それで今、或るは一つ…

記献上

【 解説・21 】《後段・四/ⅱ》(6~9/9) ○これ、仰せに随〔したが〕い、語臣(阿禮)が繰り述べた噺(旧辞)を奉〔たてまつ〕る。畏〔かしこ〕くも謹〔つつし〕んで御意向のまま、詳細に採り拾いました。 しかし、上古の時、言葉とその意味は押し並べて素…

記編纂

【 解説・20 】 《後段・四/ⅰ》(1〜5/9) ○旧辞に多くの誤りが有ることを惜しみ。また先紀の記述に間違いが混ざっているのを訂正する。ここに、和銅四年九月十八日を以って詔。安萬侶、選りつつ文字化収録。稗田阿禮、語りし。 [於焉]ココニ。「詔」に係…

言祝ぎ

【 解説・19 】 《後段・三》(1~8/8) ○僭越ながら思いますに、皇帝陛下。天位を得て普〔あまね〕く其の徳を広め、王座にあって三〔みつ〕に通じ、民を教え導く。紫宸殿(御所)に居まして徳は陸路の僻地まで被い、皇居に坐してその教化は海路の至る果てま…

稗田阿禮

【 解説・18 】《後段・二》(1~6/6) ○ここに居ります舎人、稗田の姓〔カバネ〕の名(を負う)の者。年は二八、優秀な人である。一度見ればソラで唱〔トナ〕え、一度聞けば忘れることはない。そして勅〔ミコトノリ〕があり、語ノ臣〔カタリ・オミ〕の阿禮(者)に…

朕聞

【 解説・17 】《後段・一》(1~10/10) ○朕〔われ〕、聞いてる所では、各家々が持っている帝紀や本辞は其の内容に於いて、真実と異なっていたり偽りも多く加わっているという。 今その誤りを改めておかなければ、何年も経たないうちに正しい旨が判らなくな…

分岐の一行

【 解説・16 】 於是天皇詔之 於是、天皇 詔〔ミコトノリ〕タマワク。 ○ここに、天皇は(国史編纂についての)御言葉を発せられた。 [於是]ココニ。[天皇]阿閇皇女(元明天皇/四三代)。[詔之]ミコト・ノリ・タマワク。御言・告り、賜わく。この詔は、…

天武即位〈2〉

【 解説・15 】《前段・五/ⅱ》(5~14/14) ○清原の大宮で即位する。道は軒后より勝り、徳は周王を越える。乾符を手にして(王位に就いて)天地四方の全てを治める。天統を得て(王位を継ぐ者となって)、地の果てに至るまで広く包む。 二つの気によって作…

天武即位〈1〉

【 解説・14 】《前段・五/ⅰ》(1 ~ 4 /14) ○浹辰(幾ほどの日)も経たぬうちに、敵(近江軍)は散り散りとなって反撃する者も居なくなり鎮まった。すなわち、牛を放ち馬を休ませ、心穏やかに帰還の途に着く。旗を巻いて矛を収め、祝いの宴で舞い謡いをし…

壬申の乱

【 解説・13 】《前段・四/ⅱ》(6~11/11) ○しかるに、天位の時は未だ至らず。南山(吉野の山)に隠遁(脱する)する。その後、人員が集まり軍備が整い、吉野から東方面の地を経由して行軍した。皇子らの乗り物は間もなく手配ができ、皇妃を乗せた輿は担が…

大海人蜂起

【 解説・12 】《前段・四/ⅰ》(1〜5/11) ○飛鳥の淸原の大宮に移り至る。大八嶋(クニ)を御(治)める眞人天皇の御世となる。王としての能力は既に備わっていたが、遂にその時がやってきた。夢の歌を開き、その内容を紡ぎ合わせ。夜の水(川)に至り、王…

三行棚字

【 解説・11 】《前段・三/ⅱ》(8、9、10/10行) ○この状況に対し、何もしないという訳にはいかない。(各家から集められた文書類を見ると)歴史上の同じ出来事を記した物も多くある。書によって、紙面をふんだんに使い事細かに著している物もあれば、概略…

聖帝

【 解説・10 】 《前段・三/ⅰ》(1~7/10行) ○儛〔マイ〕を列〔ツラ〕ね、賊〔ヱミシ〕を討ち払う。歌を聞いて仇(災い人)をねじ伏せる。卽ち、夢に教わり神祇(武人)に敬意を表わす。これにより、賢后(賢明な王)と言われる。〈崇神天皇〉 国見の際、炊煙…

神武東征

【 解説・9 】《前段二 /ⅵ》(14、15、16/16行) ○伊波禮毘古は(日向を出発し)秋津島の瀬戸内海に面した幾つかのクニを経て、東に向かった。 出川〔イヅカハ〕が熊(濁流)となり軍団は弱るが、天剣を高倉下によって獲得し生気を取り戻す。 生尾人(山中…

天孫降臨

【 解説・8 】《前段二/ⅴ》(11、12、13/16行) ○(人々を集め)天の安河で、葦原の瑞穂国を平定するのに誰を派遣すれば良いかを共に相談させた。(派遣された建御雷神は)小浜で大国主に対し領地の放棄を要求し、それを受け入れさせた。是を以って、番邇邇…

宇気比

【 解説・7 】《前段二/ⅳ》(9、10/16行) ○(天照)鏡を懸ける。劒を喫んで吹き付ける。そして、多くの皇子皇族によって王家が続く。○(須佐)珠を噛んで吹き付ける。ヲロチを退治する。以って、子孫が栄える。 [寔知]マコトニシル(棚字) ◯寔/まこと…

八尋殿

【 解説・6 】《前段二/ⅲ》(5、6、7、8/16行) ○かれ、太素の頃は(交合のやりかたが)よく分からないまま行なって失敗したが、天ツ神に相談をして指摘を受け不作法があった事を知る。土を孕み、島を産むための正しい時を。 ○元始は物知らずだったが、祖神…

【 解説・5 】《前段二/ⅱ》(3、4/16行) ○所以に、幽(黄泉の国)と顯(この世)を出入(関わり)して帰還した後、全身の穢れを祓うため、海(塩水)と水(淡水)で浮沈(沐浴)した。 まず、海に入って身を滌〔すす〕いだ時、持ち物や衣服から、また潮流…

産巣日

【 解説・4 】《前段二/ⅰ》(1・2/16行) ◯然して、天と地(空と海)に初めて分かれたのち、顕れた三神がその後、ムツキの始祖となる。 始めは霊気として一体であった。この生命を司る神・キツキが、陽と陰(男女)一対に分離し、この二つのキツキが交合し…

冒頭句

【 解説・3 】《前段一》(1、2/2 ○そも、この世界の始まりは一切が混ざり合った状態だったが、いつしか重いモノは降下して溜まってゆき、面(カ)となり、上には何も無い澄んだ空間(キ)が広がっていた。ただ、天空の神(キツキ)、下面の神(カツキ)は未…

やつこ

【 解説・2】 臣安萬侶言 臣〔やつこ〕 安萬侶〔やすまろ〕 言〔まをす〕 ○下僕であります私(ヤツコ)、安萬侶〔やすまろ〕が、謹みて言(申)し上げます。 [臣]①オミ。仕える者。②ヤツコ。自身をいう謙譲語。 ◇「オミ」という語。 人を表わす言葉の一つ…