大海人蜂起

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【 解説・12 】
《前段・四/ⅰ》(1〜5/11)

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○飛鳥の淸原の大宮に移り至る。
大八嶋(クニ)を御(治)める眞人天皇の御世となる。王としての能力は既に備わっていたが、遂にその時がやってきた。
夢の歌を開き、その内容を紡ぎ合わせ。夜の水(川)に至り、王位の継承者として任を得たと確信する。

 

]イタリ。及ぶ。(棚字)[飛鳥]アスカ。またはツツキ。[淸原大宮天武元年(六二七)、大宮を造り、その冬に移り住む。書紀では飛鳥浄御原宮と表記。

御大八州]◯御/シラシメシ。治める。◯大八州/全土。国土。[天皇御世]◯天皇/天渟中原瀛眞人〔アマ ノ ヌナハラオキ ノ マヒト〕。大海人皇子天武天皇(四十代)。天皇の読み方には、アキツキ、アキツミ、オホキミ、スメラミコト、などあるが、ここではオホキミを採る。◯御世/一家長(王)が在位する間。ここでは天武が王である時代。

◇御の文字は「ミ」と読みますが、用途として人や神を表わす時「身」の意として使う上級文字でもあります。御世という表記も(異論はあるでしょうが)天皇の “ 身の世 ” という意味で捉える方が理屈に合います。

この行では御大八州にも御を使いますが、こちらは「治める」の意であり、同じ行で同じ文字を別の意味で使っています。何か意図があるのでしょうか。

潛龍體元]◯潛龍/まだ王では無いが既に王の徳を備えている。水面下に居る龍。◯體元/體=体。首長としての資質を持つ。[洊雷應期]◯洊雷/しきりに聞こえる雷鳴。動き出す前兆。洊雷震。◯應期/應=応。その期に応じる。
◇潛龍、洊雷ともに「次に王になる者」を示し、太子の意でも使う漢文用語です。

開夢歌而]◯夢歌/イメのウタ。夢の中で聞こえた歌。◯開・而/ヒラキ・テ。その意味を解き開いて。◇開の字は聞の可能性も捨て切れないが、「見た夢の意味を解釈して」の意とする。[相纂業]◯相纂/集めて繋ぎ合わせる。相応するか見定める。◯業/シワザ。行為。行なった内容。

投夜水而]◯夜水/不詳。◯投・而/ホオリ・て。至り・て。[知承基]◯知承/たまわり知る。察知する。◯基/鴻基。ヒツギ。王位継承。

◇《天武紀》元年六月の条に「将及横川有黒雲、広十餘丈経天(略)然朕遂得天下歟」〈横川に至るころ、黒い雲が天を経ること十丈余りに広がり…。これは、我遂に天下を得る知らせである〉とあり、この出来事(記述)を指すか、とも言われますが定かでは有りません。

国史を作るために集められた資料には、記紀の記事としては採用されなかった文書も当然あるに違いありません。また掲載されてはいるが、表現方法が異なるのもあるでしょう。序の文章の中には、本文では使われなかった其れらを基に作られた部分も有り得ます。これが意義不詳を余儀無くさせてしまいます。


【ヲグナ】